茶道具
茶掛(ちゃがけ)の一行物(いちぎょうもの)について
お茶室での掛け物を、茶掛といいます。
茶室における掛け物の役割とその重要性は、特に指摘されます。
季節を表した言葉、和歌、禅宗からの影響で、精神を表した物など。
多くの物がありますが、「墨蹟を第一とす」と言われ、禅僧の揮毫にな
る筆蹟こそが、茶道具の中で一番だと言われていました。
今は、筆者も禅僧に限らず、他派や茶道各流の宗匠も書かれています。
一行物の禅語には、表面の意味の背後に深い禅旨を込めた物が多いので
その背後の意味をよく理解して使用し、また拝見すべきです。
一般に知られています、季節感のない物には
「放下着」(ほうげじゃく)捨ててしまえ、無一物になれ
「喫茶去」(きっさこ)まあ、お茶でも飲みなさい
私のホームページのタイトルにしています
「日々是好日」(にちにちこれこうじつ)
「無事是貴人」(ぶじこれきにん)
九月、十月のふさわしい物を紹介します。
「桂花露香」けいかは つゆも かんばし
ここで言う「桂」(かつら)は、初秋の頃になると黄や白の花をつけ、
さわやかな香を放つ木犀(もくせい)のことです。この木犀の花の香
は、まことに爽やかで快いもので、古来、特に「秋香」と呼ばれて珍
重されて、しかもこの桂花は花そのものだけでなく、それからしたた
り落ちる露までもかんばしいというのが、この四字一句の表面の意味
です。
しかし、この句は単にその事実を叙したにとどまるものではない。
自ら人間形成につとめ、磨き磨きあげた君子、道人の言行というもの
は、あたかも桂花が露までかんばしいように、なにげない一言一行
もみなかおり高く、なんとも言えない風趣があるものだという真意が
含まれています。
「香木は片片香し」
沈(じん)や白檀(びゃくだん)などの香木は、どのような些細な一
片をとっても、どれもこれも香気があるという句がありますが、
これも同じ意味です。
ちなみに、「センダンは双葉よりかんばし」と言う言葉がありますが
このセンダンは、沈や白檀のことを言っています。
「せんだん」という植物とは違います。
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