「教えて茶道」Vol,209

八月始めに、名古屋の友人にお茶事に招かれました。お稽古ではなくご招待です。
本番です。緊張とどんな趣向かとの揺らぐ心を持って興味心々で出かけました。
暑い時期でお客の私達よりは亭主のお心使いはいかばかりかと後で心配
いたしましたほどに、素晴らしいお茶事で感激しっぱなしでした。
道具の詳細は後ほど紹介いたしますが、懐石もおいしく、どれもこれも
印象的でした。
軸は「主客在大圓之中」通りいっぺんの亭主と客ではなく亭主も客の私
達も共にも楽しもうと自分流に解釈して同じ気持ちだったので、亭主の
選択に心打たれました。
釜は釜飯一人前くらいの大きさのかわいらしい茶飯釜。噂にだけ聞いて
いた茶飯釜でご飯を炊き、湯を沸すが見られるとはうれしかったでした。
勿論その小ささですから風炉も小型でしたし炭も小さいのを選んであり
細かな心配りに感じ入りました。
亭主がご飯のでき具合を心配されたいましたが、おいしく炊きあがりこ
ちらも満足いたしました。
めずらしい煮物碗もいただけて、これは真似をしてみたいと思いました。
主菓子「笹船」が入った縁高は、杉木地透かしで、透かしは涼しそうで、
また、杉の香りが今木を切ったようによく香っていました。
濃茶席に入った時に床に掛けられた吊り舟の花入にすくっと入れられた宗
旦むくげの一輪。これも素晴らしい印象でした。
まだまだありましたがこれくらいにして。

<待合>  軸    瀧の画賛 宮西玄性筆
                涼しさをたくひもさらに夏山の
                峯よ里おつるおとなしのたき(大綱和尚遺影) 
        煙草盆  瓢一閑 秀斎造
        火入   蕎麦猪口
        灰吹   青竹       
        汲出   切子グラス かぼす水    
            
<腰掛>  煙草盆  桑透かし
        火入   桶側 勝見永泉造
        煙草入  一閑四方 道場宗廣造
        灰吹   青竹
        煙管

<初座席> 軸     主客在大圓之中 小林太玄筆
        香合    鈴虫蒔絵茄子 水島樹芳造
        紙釜敷  水色

        釜    茶飯釜(風炉)
        敷瓦   織部
        風炉先  蒲芯 宗康作

<初炭>  炭斗  唐筆篭 又妙斎好 島田竹宝斎造
         箒  青鷺 長谷川甫斎造
        火箸  三津火箸 哲匠造
        
<懐石>  折敷  真塗
        向付  六つ折り朝顔形青磁 松尾重利造
        四つ碗 黒
             
        ちろり 硝子
        汁鍋 

        煮物椀  山葵蒔絵(蓋裏に蜻蛉)
        和え物鉢 手付志野
        小吸物  ガラス 寺澤彰紘造

        八寸 
        湯桶
        香物鉢 粉引
      
        主菓子 笹船 両口屋是清製
        縁高  杉木地透かし

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<献立> 向付  … 揚げしらす、枝豆、大根おろし、酒、醤油
、出汁
       酒    … 大吟醸尊王・幻々
       煮物椀 … 鰻蒲焼、丁子麩、洗いねぎ、露生姜
       汁    … 焼き豆腐、茗荷、あさつき
       預鉢  … 小茄子の揚煮、名古屋コーチンの丸
       和え物 … 十六ささげ、味噌だれ、胡麻           
       小吸物 … 紫蘇の花、カリカリ梅
       八寸  … 鮑 さつまいもの
       香物  … 守口大根、新生姜、ぶどう汁漬けらっきょう
              かくや
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<後座席> 花  宗旦槿
        花入 吊り船 
宗康作
      
<濃茶>  名水  養老の滝・菊泉水
        水指  木地釣瓶
        茶入  瀬戸肩衝 鵬雲斎箱 銘老松
        茶碗  黒楽 四代尼焼道年(中村道年尼)造
        茶杓  自作 銘長久
        濃茶  千代昔 松柏園詰
        蓋置  青竹
        建水  えふご唐銅
    
<続き薄> 煙草盆  網目
        火入   志野角
        煙草入  檀紙 山崎吉左エ門造
        煙管

        干菓子   団扇 青楓 川口屋製
        干菓子盆  瓢 越前塗り 

        棗    線彫花火 牧田嘉夫造
        茶碗   銀砂子・葦 加藤浩一造
        
        薄茶 松尾流お家元好・かん遊 あいや詰  
     
<くつろぎ席> 柚子シャーベット 
          煎餅  美濃亀製
          冷茶  ふりふり緑茶(西尾の茶)

<窯 かま>用語

御深井  おふけ
      御深井焼(おふけやき)名古屋城内にあった尾張徳川家の
      御用窯。外郭の御深井丸にあったためにこの名が付けられ
      た。1610年藩祖義直が仁兵衛・唐三郎・太兵衛らの陶工に
      つくらせ、最初は祖母懐の印を用いたが一事中絶。十八代
      斎朝のとき加藤唐左衛門に再興させ、染付や青磁などを焼
      かせた。1624−44ごろ尾張藩に仕えた陳元贇(ちんげんぴ
      ん)が安南染付写しなどをつくっている。「御深井」の印
      のあるものものは再興以後のものという。器を始め古瀬戸
      風の黒褐釉であったが、中頃から特殊な御深井釉が現われ
      別に御深井青磁とも呼ばれた。

男山   おやま
      男山焼(おやまやき)紀伊国(和歌山県)広川の磁器。
      1818-30頃崎山利兵衛が藩主の許可を受けて始めたが1878
      廃窯。染付ものを主とし、亀甲紋・雷紋などがその特徴で
      あり、色絵ものは藩の御用品であったという。「南紀男山
      」の書銘がある。

吉向  きっこう
      吉向焼(きっこうやき)江戸時代後期吉向治兵衛が大阪十
      三ではじめた陶器。初代冶兵衛は伊代国(愛媛県)大洲に
      生まれ、父は砥部焼の陶工帯屋武兵衛。通称亀次、のち行
      阿と号した。明和初年京都に出て陶法を学び、大阪十三に
      開窯、亀次の名に因んで亀甲と称したが、大阪町奉行所水
      野氏から吉向の号を拝領し、吉向焼と改めた。十三軒・行
      阿・出藍・連珠・紅翠軒の印銘を用い、主に楽焼・交趾風
      軟陶を得意とし、その意匠はすぐれたものがある。なお、
      周防岩国藩主吉川侯・信州須坂藩主堀侯・美作藩主松平侯
      ・水戸徳川家に招かれ御庭焼を焼いた。のちに江戸に出て
      1861年に没。江戸吉向は初代冶兵衛の養子があとを継いだ
      が明治に入って廃窯した。大阪吉向は代々亀冶の名を継ぎ
      近代、吉向松月と十三軒吉向の二家に分かれた。