五月五日スイス人のマイケルさんが茶会をしましたので出かけました。
古い借家を自分でできる限り改造して、その工夫に感心させられました。
待合には兜と、古い戸板に掛け釘を打ちつけて、刀と木刀を飾ってありま
した。
茶室の軸は「竹に上下の節あり」花は薄紫の花しょうぶが生けてありまし
た。古いよしず戸がカーテンレールに打ちつけられ、五月の風がふわりと
揺らせて、その工夫にびっくり。隙間から庭の緑が見え、本来の茶道具と
中国製の摘み付き壷が棗、蓋置きは菖蒲の絵が浮き彫りになったぐい飲み
と、その取り合せの不思議さを感じさせず茶の雰囲気にぴったり。パリ行
きなどで、2週間ほど茶に縁がなく、いらだっていた私の心を穏やかにさ
せました。大満足で茶室を出たのは言うまでもありません。
日本人でもお茶に興味を持つ人も少なくなった今日この頃、外人とは言え、
伝統を大事にする人なら誰でも感激するうれしさを味わいました。
炉から風炉に変わり、柄杓の扱いが見せ場になります。
前にも申し上げましたが、もう一度説明を。
柄杓の扱いが、置柄杓(おきびしゃく)切柄杓(きりびしゃく)
引き柄杓(ひきびしゃく)をします。
これは、昔、弓を鳴らして魔よけをしたと言う故事から、弓の所作を取り
入れた作法です。
置柄杓は、湯を汲み終わったあと柄杓を釜の口に置く際、柄杓の中節のと
ころを右手と人差し指とで柄の横から押さえるようにして置く。
切柄杓は、茶碗に茶を入れ、湯を汲んで必要なだけ入れ、残りを釜に戻し、
柄杓を釜の上に置く時、合を仰向けにして親指と人差し指の付
け根に柄を預け、四本指を揃えてのばし、柄と直角に交わるよ
うにする。
引柄杓は、水を釜や茶碗に入れ、再び釜の口に置く時の扱いで、五本の指
を揃えて柄の切り止めまで、引いて柄を釜に置く。
少々、扱いにくい、めんどうだと思えますが、
お客様にお見せしている、難しそうにせず、優雅に見せるのも、これもお
もてなしの一つと思えば、稽古の励みになると思います。
柄杓(ひしゃく)について
差通し(さしとうし)と月形(つきがた)、がある。
差通しは、合(ごう、湯を汲む丸い部分)を柄が差し通った柄杓で、
台子(だいす)、長板の総飾りの時に用いる。
杓立(しゃくたて)に飾るので飾り柄杓ともいう。
月形は、 一般の点前に使うもので、風炉用と炉用がある。
風炉用は、合が小ぶりのもので、柄の切止の身の方が削ってある。
炉用は、合が大ぶりで、切止の皮目の方が削ってある。
「み そぎぞ なつのしるしなり」と、覚えたものです。
<薄茶器 >替茶器(かえちゃき)の取り合せ
薄茶で点前をする時、薄茶器とは別に替薄器を用いる場合があります。
替茶器の役割は二つあります。一つは客の数が多いと一つの茶器ではお
茶の量が不足するため、その控えとして用います。もう一つは、装飾的
役割で、棚物を用いた時に終りに飾りを置いたり、主茶器に添えて拝見
に出したりします。したがって、主茶器との取り合せが重要になります。
主として、祥瑞(しょんずい)、志野、織部などの陶磁器が用いられま
すが、塗り物も時には用いられます。主茶器が無地なら、蒔絵や堆朱
(ついしゅ)など主茶器と対照的なものを取り合せます。
<茶碗 ちゃわん>用語
高台 こうだい
香台・光台の字を宛てることもある。茶碗・鉢・皿などの底
部の基台をいう。高台の成形は大別すると付け高台と削出し
高台に分けられる。付け高台は作り高台ともいい、底に土輪
を付けたもので、須恵器や黄瀬戸茶碗・志野織部の一部に見
ることができる。削出し高台は、水挽きして半ば乾かした後
箆を用いて高台を削出したもので、瀬戸天目のほか唐津糸陶
磁器には一般的である。その輪の形から輪高台・三日月高台
・面取高台・蛇の目高台・二重高台、高台の内側の削り痕の
状態から糸切高台・兜巾高台・渦巻高台・縮緬高台・椎茸高
台・櫛高台など、高台の足の状態によって竹の節高台・撥高
台・切高台。割高台・桜高台などの区別がある。叉高台底部
畳付の不着物の痕により貝殻高台・砂高台などと呼ばれてい
る。ベタ底・碁筍底・返し底なども高台の形式の一部と見て
よい。
高麗 高麗茶碗 こうらいちゃわん
朝鮮すなわち和称の高麗でつくられた茶碗の総称。高麗時代
を指すものではなく、主として李朝期の産である。茶湯での
呼び名に従えば、古格の古雲鶴から、井戸・三島・熊川(こ
もがい)・刷毛目・粉引・堅手・玉子手・魚屋・伊羅保・蕎
麦・柿の蔕・金海・御所丸・呉器・立鶴などがある。井戸や
三島などには朝鮮本来の民芸陶に生まれたものが多いが、日
本からの注文で作られたいわゆる御本茶碗がかなりの部分を
占めている。
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