「教えて茶道」Vol,193

<釣釜>
三月は釣釜(つりがま)の季節です。
釣釜は、台目柱、中柱のある茶室には自在や鎖が柱と平行するのでふさわ
しくありません。自在はごくわびたものなので、四畳半以下の小間に用い
たほうがよいでしょう。
炭の組み方など変わりませんが、カンは釜にかけて、蔓がかかっているの
で、炭斗に組む必要はありません。
天井から鎖で釜が吊り下げられますから五徳が不用になりますので、五徳
蓋置が用いられたりします。
釜を鎖叉は自在で天井から釣る場合、天井が高いと下部の垂れ先が短くな
って、見にくいことがあります。このような時は、下部で継ぎ足しすると
、さらに不細工に見えるので、上部で継いだ方がいいでしょう。
釣り釜に用いる釜は、雲龍、車軸、または鶴首など細く長目の物がよいで
しょう。
点前中、ゆらゆらしますので、柄杓を置く時に気をつけましょう。

五徳 ごとく
炉・風炉中に据えて釜をのせる器具。主に鉄製で土製のものもある。
下部の輪から三本の柱が立ち上がり、先端に爪が内側にのびている。
五徳蓋置
五徳形の蓋置き。隠家・火卓とも言う。
台子・袋棚にも用いられるが、普通は炉・風炉中に五徳を使用しない場合
、すなわち切掛風炉・透木風炉・釣釜に使う。
点前に用いる時は輪を上に、飾っておくときは輪を下にして扱う。
鉄製・唐銅・南鐐・陶磁などの物が多い。


<薄茶器 >棗の鑑賞
薄茶を入れる器を、薄茶器、または薄器と総称します。
種類はさまざまですが、形によって棗(なつめ)、中次(なかつぎ)頭
切(ずんぎり)、雪吹(ふぶき)、の四種類に大別され、材質も塗り物
を中心に木地、竹などがあります。棗は薄茶器の基本で、塗り物です。
英語で塗り物をジャパンと言うほど、その技法、意匠は日本で独自に発
展しました。棗にはこの日本が誇る伝統の技や美意識がこめられています。
無地黒塗りの侘びて洗練された形、蒔絵の華やかで美しい色彩をはじめ
とする多彩な装飾技法などが多くの茶人を魅了してきました。その豊か
で変化に富む意匠は味わい深い趣があります。


<茶碗 ちゃわん>用語

伊羅保  いらぼ
     朝鮮産御本茶碗の一種。鉄分の強い砂質の素地を轆轤成形で
     薄く仕上げたものであるが、その土質のため轆轤目が筋立つ
     のが一つの特徴とされ、そのざらめいた肌が手にイライラす
     るというところからこの名が出たと言う。薄作りのためベベ
     ラ口が多く、景色の一つに数える。また口の端に錐彫りの筋
     目がつくのが普通で、口縁の切回しとして賞美される。高台
     は大きく手強く竹の筋になるものが多い。土灰釉がごく薄く
     かかり、時には半掛けにしたもの、釉下に白刷毛をさっと刷
     いたものもある。この釉は窯の火加減によって、青みだちに
     なったり黄ばんだり微妙な変化を見せる。黄あがりになった
     のが黄伊羅保で、岩波・柞(ははそ)・女郎花などの名碗が
     ある。全体に力強くどっしりとして見所のよく現われたもの
     を古伊羅保あるいは本手伊羅保と呼ぶ。対馬・巴・嵯峨野な
     どがある。高台は総じて力強いが、中を釘のようなもので削
     って渦目をつけ、時として彫りが高台から外へ飛び出したも
     のがある。これを釘伊羅保と呼び、両彦・秋の山などが代表
     例とされる。また、時には片側に土灰を片側に長石質釉を掛
     け分けにしたものがあり、二つの釉の発色が異なるため一碗
     中二様の景色が生じ、それがまたもてはやされた。これが片
     身替伊羅保で千種屋・初雁・池水・夏山などの名碗が知られ
     ている。

ベベラ口 茶碗などの口造りが切れたり裂けたりしたものを、焼く前に
     重合わせてくっつけたものをいう。