「教えて茶道」Vol,184

稽古を始めると、ともすれば点前手順だけが大事になり、それに振り回され
るような感じになりがちです。そのために稽古が億劫に感じられたり、自分
がなぜお茶の稽古をしているのかを忘れてしまいます。
そんな時、お茶は自分にとって何なのか、そんな気持ちで茶道を始めようと
したのか、と心に問うてみることも大切です。
利休百首の「その道に入らんと思う心こそ我が身ながらの師匠なりけれ」
志をたて、自ら進んで学ぼうと思う心が起こったなら、その時には自分の心
の中に立派な師匠ができている。そのように茶道は自発的に習うよでなけれ
ば進歩もないという意味。
お茶の稽古をして良かったと実感できるよう自分なりの楽しさを見つけて下
さい。
又、姿勢はどうなっているかを確認してください。
お点前の時、猫背になったリ、りきみ過ぎて、肩が上がっていませんか?
下腹に力を入れて、背筋を伸ばして、肩の力を抜いて、リラックスしてお茶
を点ててください。
気持ちをゆったりしてお茶を点てると一層おいしさを感じます。

もう一つ、物事にとらわれないことも必要です。お茶の世界でなく、人生全
般にについても言えることですが。
京都の友人で、初釜と彼女の娘さんが弾くエレクトーン演奏を一緒にされま
した。私もお手伝いに参りましたが、とてもいい雰囲気でした。
お茶といえば、琴や尺八となりがちですが、彼女はタンゴが好きなので、ア
ルゼンチンタンゴ、イパネマの娘や、シャンソンもありと、勿論琴の音も流
れておりました。
会場に、軸を掛け、その前に高台を置き花を生け、立礼式でニ碗までその場
でお茶を点て、後はお点て出しで、四十人ほどのお客様に花びら餅と共に初
釜の雰囲気を味わって後は、演奏とホテルの食事を楽しみました。
こんな風に、お茶を知らない人でも味わえる、味わってもらえる設定はある
のだと、友人のアイディにも感心しながら、私自身の勉強もできました。
頭は常に柔らかく、気配りは忘れずにでした。


<長緒茶入の点前のポイント>
長緒茶入とは、長緒のついた仕覆に入った茶入を用いてする点前です。
点前として濃茶点前とは変わりありませんが、長緒の仕覆には平茶入をいれ
るのが約束で、この仕覆の長い緒と茶入の扱いが中心となります。
長緒はチョウチョ結びのように結び、両端も揃えて右方の一番前の輪が長緒
の端になるようにします。右の上の輪が肝心です。
点前中で、茶入を仕覆から出す時、
茶入を左手で持ち、結んである緒の右側、手前の端を右手の親指と人差し指
で摘み、静かに手前に引きます。
緒が一つねじれているので、手をあお向けて緒のねじれを直します。
緒の端を右手の薬指と小指とで握り込み、その手で茶入を横向きに置き替えます。
左手で打留(うちどめ、結び目)を持って少しゆるめ、向こう手前とのばします。
右手で緒の端を茶入の上に向こうから手前かけて、右手で茶入を取り左掌の
上に載せ、右手で緒の端を左手の小指と薬指の間にはさみ、仕覆の口を右、
左とひろげ、茶入を右手で出し、膝前に置きます。
左手指にはさんだ緒を離し、仕覆を両手で持ち、緒の端を打留いっぱいまで
押さえて引き、左手で仕覆の端を持って、右手で緒を手前から向こうヘ回し、
輪を二つ作り、緒の端を手前から向こうヘ通し、その端を左手でしっかりと
持って、右手の親指と人差し指で二つ輪を左方、時計の針の方向に一つねじ
り、その輪を右手で仕覆の中に入れます。
火の方へ打ち返して置くのは同じです。
茶入を清める時、
上から取って左掌に載せ、蓋を清める。帛紗を握りこんで茶入を上から取っ
て、茶入の胴を持替えて横から持ち、胴拭きをします。
茶を入れる時、
茶杓を右手で取り、左手で茶入を上から持ち、茶杓を握りこんで右手で茶入
を縦に持って、左掌の上に載せ、蓋を取り、茶碗の右横に置き、茶を三杓す
くい入れ、茶杓を茶碗の縁に載せ、右手を茶入の添えて手前に回して茶を出
します。
茶入の口を拭き、指を懐紙で清め茶入の蓋をします。
仕覆の長い緒の始末と、茶入を掌に載せるが異なる点です。


<裂地 きれじ>

紗金  しゃきん 紗地に平金糸で文様を織り出したもの。紗は搦経と地経
         交叉させ、緯を打込んだ織物で、これに文様を織り出し
         たものを紋紗をいい、その文様が平金糸で織られたもの
         を紗金という。平金糸で繍付けたものは金紗と呼び区別
         している。大灯国師袈裟裂は白紗地に牡丹唐草紋を織出
         した紗金である。表装裂に用いられ、中国宋・元代から
         明代初期の渡来裂である上代紗が最も珍重され、色糸を
         併用した朝鮮紗がこれに次ぎ、またわが国おいても織ら
         れ、このほか古田織部の好みによって京都竹屋町で明人
         に織らせたといわれる竹屋町裂をはじめ、銭屋・雁金屋
         ・未継紗などがある。

繻子   しゅす 繻子織の織物。布面は滑らかで光沢がある。縦緯糸に本
         絹の練糸を使用した本繻子、絹綿交織の綿繻子、綿毛交
         織の毛繻子、また種々の浮模様を織り出した紋繻子など
         種類が多い。1573、1592年間京都の職工が中国の法にな
         らって初めて製造し、古来多く帯地などに用いる。サテン。